こんにちは、砂川です。
いよいよ暑くなって夏本番!の毎日が続きますね。
皆さんも体調に気をつけてお過ごしください。
さて、本日はCSVの事例をひとつ取り上げてみたいと思います。
■食品におけるCSV、企業の社会的責任
先日、厚生労働省の有識者会議において、砂糖への課税が議論されました。
面白いのは、財源の確保を目的とするだけでなく、
「社会保障における健康の決定因子に着眼」 した結果だとの事です。
食べ物を売っていく企業は、ただ品物としての食品を売るのではなく、
食を通して購買者の健康にも配慮しながら、
企業の社会的責任を果たす時代になってきたなー、、、
という感があります。
実は、意外な国で 「ジャンクフード税」 が既に導入されていることをご存知でしょうか?
それは、モーガン・スパーロック監督の 「スーパーサイズ・ミー」 で問題提起された
ファーストフード大国、アメリカです。
その背景にあるのは、ファーストフードの消費と、健康や経済への関連性です。
■食品・ファーストフードの消費と健康、経済
アメリカのある地域において、4月に 「ジャンクフード税」 が導入されました。
当該地域は他の都市と比べて経済的に課題があり、糖尿病患者の割合が有意に高い、
との調査結果がありました。
そこで、地域の住民の健康を向上させるため、また、税収によって食産業を誘致するため
「ジャンクフード税」 の導入が決定されたようです。
一方で、アメリカには、都市部でも新鮮な野菜が手に入らないといった 「食の砂漠」 問題も存在します。
広大な国土を持つアメリカには、生活の中心となる街には小さなスーパーマーケットしかなく、
そこには缶詰や冷凍食品しか置いていない現象が 「食の砂漠」 です。
そのため、保存性の高い食品からファーストフードを作らざるを得ない、という事情があります。
この事象には、大きく2つの視点があるように思います。
・ジャンクフードへの規制 → 政府
・ジャンクフードを始めとする食品の健康配慮向上 → 企業
社会的厚生を改善するため、ジャンクフードへ課税して消費を減らしたり、
税収で新鮮な食品を生産する産業を誘致したりすることは政策当局ができるひとつの施策ですが、
一方で、そういった食品に依存せざるを得ない所得環境や流通環境にも配慮する必要があります。
従って、同時に実施することで有効となる施策は、ジャンクフードを始めとする保存食品の
有用性(機能性)に着目し、課税の根拠である 「健康への影響」 に配慮した商品開発に
企業が取り組む事です。
( こういった商品開発に政府補助を支出するようなパターンもありです。)
政府が即効性の高い政策を実施すると同時に、企業がこの社会的課題に気付き、
遅効性ではあるが抜本的な施策を打つことが、食品と健康、結果として経済課題への
貢献を果たす施策になると思います。
■ネスレの取り組み
アメリカ社会、そしてグローバルに根深く存在するこれらの社会的問題解決のために、
ある決定をした企業があります。
それが、「Good Food, Good Life」 のスローガンで全世界に知られるネスレです。
ネスレはアメリカで発売されている冷凍ピザやスナック菓子から人工香料を減らし、
さらに塩分を2013年度比で10%減らす、との決定を下しました。
この決定は、アメリカで流通している同社の6つのブランドにまたがり、
なんと250以上もの商品に適用される模様です。
ネスレによる今回の取り組みは、アメリカにおける社会課題、すなわち
食の砂漠の影響軽減、所得格差に関連した食品選択傾向による影響軽減を念頭に、
事業を通じて顧客の 「Good Food, Good Life」 を実現することで
経済的利益と社会的課題の解決を図るものです。
ネスレはCSVにおいて世界のリーディングカンパニーとなっていますが、
今回の英断もまさに企業理念とCSVの経営戦略が実現した例と言えるでしょう。
■ネスレについて
このネスレが生まれたのは1905年のこと。
2つの会社が合併したことによって設立されました。
その2社とは、良質な原材料から作られ、長期保存ができるミルクを提供するアングロ・スイス煉乳会社。
そして、栄養不足による乳幼児の死亡率の高さに心を痛めたアンリ・ネスレが 「母乳の代替食品を」 と、
研究を重ねて立ち上げた乳児用乳製品を販売する会社です。
お馴染みの、母鳥がひなを見守るネスレのマークもアンリ・ネスレが考案したもの。
それらの設立背景もあり、ネスレには 「栄養・健康・ウェルネス」 を牽引するリーダーでありたりたい、
との企業目標があります。
そしてネスレの一貫した姿勢を象徴するのが、
リーダーシップを満たす条件には、売上の規模だけではなく、行動 (behavior) という指針が必要である
とネスレは宣言しています。
既に、チョコレートキャンディーにおいても、人工香料やアメリカ連邦政府が明記を求める
着色料の全不使用を今年中に達成すると発表。
ピザとスナック菓子部門の責任者である John Carmichael 氏は、
「消費者の健康への要望だけでなく、私たち自身がより良いもの、
より健康に配慮された美味しい食べ物を届けたいとの願いもあった」
と述べています。
社会的問題の解決のため、購買者との新たな共有価値を創っていくネスレ。
社会をより良くする取り組みの先例として、我々キャスレーがいつも学んでいる企業のひとつです。
<参考資料一覧>
『肥満大国アメリカでジャンクフードに税金が掛けられることに!』
microdiet.netレポート
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000295.000001593.html
米国:全米初「ジャンクフード税」 少ない生鮮食料品店、高い貧困率 ナバホ自治区
http://mainichi.jp/graph/2015/04/06/20150406dde007030026000c/001.html
「砂糖税」その狙いとは? 政府の有識者会議が提言
http://www.huffingtonpost.jp/2015/06/09/sugar-tax_n_7548262.html
Nestlé USA Removes Artificial Flavors, Cuts Sodium In Pizza, Snacks
https://www.nestleusa.com/media/pressreleases/pizza-
http://www.ide.go.jp/Japanese/Publish/Download/Overseas_report/pdf/0911_watanabe.pdf