こんにちは、キャスレーの砂川です。

ガーデンプレイスもイルミネーションが輝き、冬の訪れを感じる今日この頃ですね。
今年を振り返るには早いですが、今年も多くの災害がありました。
日本では9月の台風18号による豪雨で、関東・東北を中心に甚大な被害をもたらしました。
被害に遭われた方々へは謹んでお見舞い申し上げます。

いま弊社のタスクチームでは、あるNPO団体様と協働してICTのテクノロジーを用いたWebサービスを構築しています。
間接的ではありますが被災者の方々を支援しようと考え活動しております。
こちらはまた別の機会に改めて皆様にご紹介できればと思います。

さて、今回取り上げるのは世界最大規模を誇るアメリカのスーパーマーケットチェーンであり、
日本の「西友」も子会社として名を連ねている「ウォルマート」。
台風にも関連が強いウォルマートがどのように「社会的責任」の重要性を捉え、
Shared Valueを創出しているかお伝えします。

Walmart store exterior
Photo by Walmart

1962年に個人商店として創業した同社は、70年代から80年代にかけて急速に発展します。
その原動力となったのは、低コストで低価格な商品を中国で製造し、
安価な輸入品としてアメリカで販売するモデルでした。
90年代に入るとメキシコにも進出。
「Every Day, Low Price(毎日がお買い得)」のコンセプトとともに、海外への出店を本格展開します。

ところが同じ時期に、同社への強い批判が起こりはじめたのです。

その要因となったのは大きく2つ。
まず、製品の製造元や、海外進出先における従業員の過酷な労働環境。
もう1つは、アメリカ国内で働く従業員への労働条件(低賃金の非正規雇用従業員を多く雇い、
正社員の採用には消極的かつ労働組合の結成を認めていなかったこと)でした。
それらが明るみに出ることで同社のイメージは急速に悪化。
1998年から2000年までの新規出店計画の3分の1が抗議運動の対象ともなるほどで、
「社会的責任」を急速に見直す必要が生まれました。

そんな同社のイメージを回復し、社会に対する考え方を見直すきっかけになったのが、
ハリケーン・カトリーナへの対応でした。
全米で大きな被害をもたらしたカトリーナの再上陸後、
同社が持つ巨大な流通網:バリューチェーン上の優位性を活かし、
トレイラー2500台分の緊急用物資をニューオリンズ市内に配送。
また、被災したメキシコ湾沿岸地域およびテキサス州の地域住民に対しては、
トラック100台分の食料、飲料水、生活用品などを無料で提供しました。
支援活動を通じてコミュニティとの関わる必要性を認識し、
自然災害を巻き起こす環境に対して企業として
何をすべきか考え直す良いきっかけでした。

Fighting Hunger Together
Photo by Walmart

同時に「社会的責任」を果たすことによるビジネスへの影響に確かな実感を得た経営陣は、
社会と自社の共存を掲げた「Sustainability」を戦略の中心に据え、CSVの道を歩み始めます。

まずは、2005年に全世界に対して3つのサステナビリティ・ゴールを宣言します。
1. 使用するエネルギーを100%再生可能エネルギーにすること
2. 廃棄物をゼロにすること
3. 環境や人にやさしい商品を販売すること
この3つのゴールは現在も継続して取り組んでおり、本業を通じた形で環境負荷を軽減しています。
また、2007年には19年間使用してきたスローガンを
「Save money. Live better(節約をすれば、暮らしが良くなる)」と改め、
環境や社会に対する取り組みを促進させていきます。

2009年には、配送ルートの見直しと商品の包装を削減し、経費削減と環境配慮の両方を実現。
2億ドルのコスト削減を達成しており、環境面でも2014年度に約3,000台の車が排出する量に相当する
1,500万kgの二酸化炭素を削減しています。

同年、「サステナブル商品インデックス」の開発を発表。
今年に入ってからは、サステナブル商品だけを集めたオンラインショップを開設するなど、
消費者が環境面、社会面に配慮された商品を手頃な価格で購入できるための後押しに力を入れてきました。
また、2017年までには扱う商品の70%を「サステナブル商品インデックス」を基準に選定した
サプライヤーからしか調達しないという目標も掲げています。
これは自社のバリューチェーン上でサステナビリティを強化すると共に、
新たなマーケットを創出しようとする試みでもあります。

Walmart’s locally grown produce
Photo by Walmart

人材という観点から見ると、同社は退役軍人を積極的に雇用する取り組みも開始。
退役軍人の再就職先となり彼らのホームレス化を防ぎ自治体の行政コストを軽減させながら、
他社と競合する割合の低い人材マーケットで人材を確保しています。
さらに米国内で働く時給制従業員の最低賃金を時給7.25ドルから
38%増の10ドルに引き上げることも今年発表されました。
また、労働環境においても各市場にコンプライアンスの専門家の設置や、
勤怠のレポーティングシステムを改善するなど、
批判を招いたきっかけになった要因への対処も進んでいるようです。

.

同社のこれまでの活動を振り返ると、ハリケーン・カトリーナの被害を受けた支援活動は
「社会貢献」に主眼を置いたものでした。
しかしその後、取り組んだ配送ルートの見直しと、包装を減らすことで経費削減と環境保護を実現し、
顧客がよりやすく商品を購入できるための競争力に変えていったことは
『バリューチェーンの競争力の強化』と環境に対する共有価値を創造しています。
サステナブル商品だけを集めたオンラインショップは
『社会的課題を解決するプロダクトの開発・販売』という観点からCSVを実現していると言えそうです。
事業活動地域における雇用に関する社会課題を解決しながら、コミュニティへの貢献を達成した取り組みは、
『事業活動地域での事業基盤強化と地域貢献の統合』にあたるCSVを実現しています。

Fortune500で1位に選ばれる世界最大の規模を活かしたバリューチェーンの競争力強化は、
グローバル企業ならではの取り組みだと感じました。
さらに、小売業なのでローカルで勝ち抜かなくてはならないため、
コミュニティに対する共有価値も同時に創出している点は
我々も非常に参考になる点だと言えそうです。
東日本大震災の時には、西友が現地のNPOとパートナーシップを結び、
わかめ産業をいち早く復興させた事例など、台風などの自然災害が多く、
その被害を受けやすいローカル企業が経済を支える日本にとって良いお手本だと思います。