こんにちは。キャスレーコンサルティングの臼田です!

普段はお客様先に常駐をして、システム基盤の構築支援に携わっています。
その傍ら、社内では「CSV academy」というタスクチーム のオーナーを務め、
主に社会課題の啓発活動を行っております。
 ※「CSV academy」と、タスクチームについては、
  こちらのブログをご参照ください。
  CSV academy ソーシャルエンゲージメント Vol.2 ~育て上げネット様講演会~

さて、今回は日本における「子どもの貧困と虐待」
という問題をテーマに講演会を行いました。

日本における「子どもの貧困と虐待」とは?

最近、親の虐待により子どもが亡くなってしまうなど、
痛ましい事件が多く報道されるようになっています。

未来を担う存在であり、本来守られるべき子どもたちが
大変厳しい状況に置かれていることを、肌で感じるようになり、
この講演会を企画しようと思い立ちました。

皆さんは、この問題について、どのくらいご存知でしょうか?

確かに、ニュースでは聞くようになったけど、
自分の周りで直接聞いたことはないし、
実際はごく一部の問題じゃないの?と思われている方も、
多いかもしれませんね。

ですが、悲しいことに、親からの虐待を受けている子どもは、
確実に増えているのです。

事実、
2018年度、全国の児童相談所での虐待の相談対応件数が15万9850件と過去最悪を記録した
というデータがあります。

虐待が起きる家庭の多くは、
いわゆる「相対的貧困」の状態にあるといわれています。

相対的貧困は、国や社会、地域など一定の母数の大多数より貧しい状態のことです。
(日本の場合、年収が「国民の所得の中央値の半分未満」にあたる122万円以下だと相対的貧困にあたります)

相対的貧困について(参考):
「貧困」の定義は?絶対的貧困と相対的貧困とは。子どもの貧困問題解決のためにできること

認定NPO法人3keys様について

今回は、講演会の講師として
認定NPO法人3keys 代表理事:森山 誉恵 様をお招きしました。

森山様は、学生時代から家族の問題に関心を持ち、
児童養護施設でボランティアをされていました。

そこで出会った子どもたちは、何年も親からの虐待を受けており、
大人に対して不信感を持っていたそうです。

さらに、学習が大変遅れており、
中には小学6年生でも、幼児教育からのやり直しが必要な子どもがいたそうです。
(指を使わなければ数を数えられない、など)

当初は、サークル活動という形で、学生ボランティアを募集し、
施設を訪問して、学習支援活動を行っていたそうですが、
学生主体の活動に限界を感じ、もっとしっかりと子どもと向き合いたい、
という思いから、2011年に法人化して3keysを立ち上げられました。

現在は、学習支援だけでなく、
子どもたちが必要としている支援を繋ぐ活動や、
社会への啓発活動などを中心に、活動を続けられています。

森山様は、これらの活動を続けていく中で、
子どもたちのために、簡単にできることはもうあまり無いのでは、、
という思いに至るほど、厳しい現実を見てこられたそうです。

子どもたちを取り巻く厳しい現実とは・・・?

みなさんは、一年間で虐待で命を落とす子どもの数が、
どのくらいいるか、ご存知でしょうか。

これは、統計により結果が異なるのですが、
ある年の日本小児科学会の試算によると、
虐待で死亡した可能性のある15歳未満の子どもが、
全国で年間350人にのぼる、というデータがあります。

これは、一日に一人が亡くなっている計算となります。

2000年代に法律が整備され、
虐待を発見した人は、通報する義務があるので、
児童虐待の発見数は伸び続けています。

ただし、通報されたからといって、
児童養護施設で保護される子どもは、全体の3~4%で、
ほとんどのケースで、子どもは家庭に戻され、
親への訪問指導によって経過を見る、という措置がされるそうです。

日本では、税金の8割から9割が高齢者福祉に使われ、
児童保護にかける予算が非常に少ないため、
本当は保護しなければいけないケースでも保護できなかったり、
訪問指導でも十分なケアができなかったりするのです。

結果、なかなか虐待がなくなることがなく、
最悪の場合、子どもの死という不幸な事件につながってしまうのだそうです。

このような日本の現状は、国際社会からも批判されており、
国連から、「子どもの権利条約」に違反しているので、
改善するように、毎年勧告を受けているような状況です。

他の先進諸国と比べても、日本は所得格差の広がりが大きくなっています。

さらに、公教育にかける予算も先進諸国の中では最も低いので、
世帯所得による学力の格差が生まれやすくなっています。

内閣府の調査によると、
世帯所得と子どもの学力には、明確な関連性があることが分かっています。

上記の調査結果から、小6の国語Aの成績(正答率)を世帯年収で比較すると、
年収200万円未満の世帯では53.0%、
一方、年収1,500万円以上の世帯では75.5%となっています。

他の教科でも同様の結果が見られますので、
子どもの学力が、親の年収にきれいに比例しているのが現状です。

また、日本は社会保障の制度(生活保護、離婚後の養育費の請求など)
利用率がとても低い、という特徴があります。

理由として、制度自体が使いづらい・日本人の権利意識がそもそも低い
などがあるそうです。

自分たちが、当然受けられるべき権利を行使しないのは、
非常にもったいないことではないでしょうか。

虐待の通報については、子ども自身からの通報というのは1%程度しかなく、
ほとんどは、警察からの通報だそうです。

警察沙汰になるまで、
虐待が起きていることがわからない、というのが現状なのです。

3keysの取り組み① ~支援サービス検索・相談サイトの立ち上げ~

このような現状を何とか変えようと、
3keys様は、10年間取り組んでこられました。

従来の学習支援に加えて、虐待を受けている子どもたちが
必要な支援に繋がれるよう、「Mex(ミークス)」という
インターネットサービスを立ち上げました。

Mex(ミークス)は、10代を対象とした支援サービス検索・相談サイトになります。

親からの虐待を受けていたり、
学校でいじめにあっていたり、望まない妊娠をしてしまったりしたとき、
多くの子どもたちは、周りに相談できる大人がいないというケースが多いのだそうです。

Mexではそんな子どもたちが、
児童相談所や少年支援センターなどの
適切な支援機関を探せるような検索サービスを提供しています。

支援機関の検索画面。当てはまる悩みを細かく指定できる。

 

検索でヒットした相談先。地域(都道府県)の指定や利用方法(電話・メール・匿名等)の指定もできる。

他にも、学習の遅れにより漢字が読めない子どものために
ルビを振る機能がついていたり、
読み物や動画などのコンテンツが充実していたりと、
子どもの側に寄り添ったサービスになっています。

Mexは、2016年にリリース。
当初は首都圏のみで展開していましたが、現在は全国を対象に展開。

昨年度は、10代を中心に30万人が利用しており、

今年度は100万人の利用を見込んでいるそうです。
 ※実際に支援機関を利用しているのは1万人程度

ここまで利用が広がった背景としては、
貧困家庭でも、親が罪悪感から子どもにスマートフォンを買い与えることが多く、
子どものスマホの所有率が高いこと、
虐待などの被害を受けている子どもは
大人に対して不信感を持っていることが多いので、
周りの大人に相談するよりも、ネット上で悩みを吐き出す方がハードルが低い、
という事情があるそうです。

3keysの取り組み② ~子どもに寄り添った独自教材での学習支援~

もう一つの取り組みが学習支援です。

虐待を受けて育った子どもは、そうでない子どもに比べて
体験や学習の機会が非常に乏しいため、
(絵本を読んでもらったり、動物園に連れていってもらったことがない等)
小学生でも、実際は幼児教育レベルからやり直さなくてはならないケースが
多いのだそうです。

ちょっと想像しにくい話ではありますが、
森山様が、実際に会われた小学2年生くらいの子どもが、
国語の例文に出てくる「うさぎ」という単語の意味が
わからなかった、ということがあったそうです。

そのようなケースが多々あるため、
3keys様では学習支援を始める際に、必ず学力判定を行うそうです。

当初は、市販の教材を使っていましたが、
なかなか成果が出ないので、 (小学6年生の子に明らかに″幼児向け″の教材を与えると、プライドが傷ついて手を付けない等)
学習する内容は、幼児向けでも見た目を年齢相応にする等、
子どもが進んで学習できるように工夫した、独自の教材を使って支援をしています。

一人一人の子どもに寄り添ってこられた
3keys様らしい、きめ細やかな支援ではないでしょうか。

次の10年に向けた構想

ここまで見てきたように、
3keys様は今までの10年で、様々な試行錯誤を繰り返し、
子どもに対しての適切な支援を模索し、
データやノウハウを貯めてこられてきました。

次の10年は、それらを活かし、更に踏み込んだ支援に、
みを進められるということです。

例えば、複数の悩みを持った子どもが、
支援機関をたらい回しされないように、
信頼できる大人に相談できるようなリアルな場所を作る。

イメージとしては、いわゆる「相談所」のような堅苦しいところではなく、
10代ならだれでも勉強したり、スマホを充電していいよ、
というオープンな場所。

その場所を使って、学習支援も行いたいとのことです。

3keys様らしい、素敵な構想ではないでしょうか(^^

・・・講演会のレポートは以上となりますが、
ここで、参加した社員から感想を聞いてみたいと思います!

参加した社員の感想

司法書士事務所様向けの顧客管理システムのプロジェクトリーダを担当しております、
石井と申します。

本講演会に参加させていただき、メディアで見かける虐待のニュースはごく一部で、
たくさんの子どもたちが苦しんでいる…「苦しい」ということ自体に
気づいていない場合があることに衝撃を受けました。

虐待に遭った子どもたちは、全く教育を受けられていないこと。

10歳を超えていても、幼児レベルからやり直す必要があり、
専用の教材を用いて、教育をしなければならない難しさについても、
全く知らなかったため、大変驚きました。

自身が育ってきた環境が幸せなんだったと、改めて感じるとともに、
悩んでいる、苦しんでいる子どもたちを救おうとする、
3keys様の活動に大変感銘を受けました。

専用の教材をシステム化するなど、ITで支援できる部分があれば、
是非ともお力になれたらと思いますし、
苦しむ子どもたちがいなくなる社会をつくるために、
自分自身に何が出来るのかを考えたいと思います。

終わりに

皆さんは、どんな家庭で育ったでしょうか?

子どもが人格を形成したり、生きる力を養う過程において、
家庭の役割が重要であることは言うまでもありません。

しかし今、様々な理由により、
その役割を担うことができない家庭が増えています。

行政の支援も、十分でなく、
子どもの権利を守るために、必要最低限の予算さえ確保されていません。

その結果、子どもたちを取り巻く状況が、
とても厳しくなっていることは、ここまで見てきた通りです。

この問題を知れば知るほど、無力感に襲われそうになりますが、
3keys様の取り組みは、一つの希望ではないでしょうか。

特に私個人は、Mexについて、
一見親和性がなさそうな「IT」と「虐待からの保護」が、
見事にマッチした、優れたソリューションだと思っています。

昨今 、子どものITリテラシーはどんどん上がっているため、
ネットのサービスであれば利用のハードルが大きく下がる、
という点に注目したのも、見逃せません。

ITを使った社会課題の解決を目指すキャスレーに身を置く
いちエンジニアとしても、 大いにインスパイアされました!!

いつか、自分が企画したサービスで、
助けを必要としている誰かに手を差し伸べる。

そんな日を目指して、日々精進したいと思います!

最後までお読みいただき、ありがとうございました!